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前立腺がん (前立腺癌)について

前立腺がんの特徴、前立腺がんの症状、前立腺がんの検査、
前立腺がんの治療と副作用、前立腺がんの漢方について述べます。

【前立腺がんの特徴】

@ 一般的に前立腺がんの進行はゆっくりしていて、
  発がんしてから臨床がんになるまでに40年近くかかると推定されます。
A 前立腺がんの約90%は男性ホルモンの増減により増減する。
B 治療をしなくても大丈夫な潜在がんの人は多い。

  潜在がんは、非常に小さいがんで、多くの人は天寿を全うされます。
  60-70歳台の方で約3人に1人の割合です。
 
  検査技術の進歩のため、
  見つける必要のない潜在がんが発見されている側面もあります。

PSAによって無症状で発見される前立腺がんの人が急増し、約半数近くを占めます。
進行し、死にいたるような前立腺がんという意味ではわずかに増えている程度です。

前立腺がんは早期のうちに発見できれば治る率も高くなります。
血液検査で前立腺癌の疑いがあるかを簡単にチェックできるので、
50歳以上の男性は定期的に前立腺癌の検査を受けることをお勧めいたします。

【前立腺がんの症状】

前立腺は膀胱の出口から尿道を取り囲んでいる臓器で大きさはくるみ大程度です。
尿道に接する内側の部分を内線、外側の部分を外線とよびますが、
前立腺がんのほとんどは外線にでき、前立腺肥大は内線にできます。

前立腺がんは、ほとんどが前立腺の中の腺細胞ががん化したものです。
前立腺がんは、悪性度の順に低分化型、中分化型、高分化型に分類されます。

前立腺がんと肥大症とは、まったく別の疾患ですが、 
症状は、中等度の段階まで肥大症と前立腺がんにかわりがありません。

両者とも前立腺が大きくなるため、尿道が圧迫されて症状がおきます。
血清PSAは、前立腺がんのほうが高値を示すことが多くあります。
最終的な鑑別は、前立腺の生検を行い組織を顕微鏡で調べて決められます。

肥大症に比べ、前立腺がんの場合、進行すると膀胱に浸潤するため、
血尿や膀胱刺激症状がみられることが多いようです。

また、がんは骨に転移し、痛みがみられることがあります。
骨転移が拡がると、骨髄から血液を造りにくくなって貧血になり、
進行すると止血成分も不足して、消化管から出血することがあります。

リンパ節にも転移しやすく、リンパ節の疼痛や張り、下半身が浮腫むこともあります。
前立腺がんの転移臓器は,骨転移(約80%),肺(約60%)肝臓(約40%)の順です。

【前立腺がんの診断】

<血液検査>
◆PSA 基準値 4.0ng/ml以下
PSAとは  Prostate specific antigen(前立腺特異抗原)の略称で
前立腺でつくられる精液の中にあり、体外に出た精液が固まらないようにします。
このPSAのごく一部分が血液の中に漏れ出て、血液検査で測定できます。
このPSA量は前立腺がん、前立腺肥大症、前立腺炎などの病気で増えます。

PSAの値は4以下でもがんの場合はあり、20以上でもがんのない事もあります。

一般的にはPSAが4-10では10-20%に、10-20では20-50%の人にがんが発見されます。
またPSAは、前立腺がんの治療が奏効しているかどうかの目安になります。
手術で前立腺を全部とられた場合は、ゼロ(測定感度以下)が基準となります。

高齢者の方や前立腺肥大症でPSAが高い人は、
定期的にPSAを測定し、上昇傾向があればその時点で組織検査を勧めます。
ただし50-60歳台の若い方やPSAが10を超えられる方は、
組織検査は受けておいたほうがいいと思います。

◆ALP(アルカリホスファターゼ) 基準値 100〜325IU/l
がんが骨に転移した場合にはALPの数値が異常に高くなります。

<直腸指診>
直腸指診はPSAの検査値が高めの場合に行われます。

<経直腸的超音波検査>
直腸診では分からない前立腺の内部の状態を画像で確認します。

<針生検>
超音波で前立腺を観察しながら、がんの好発部位に針を6-10箇所刺して組織を取り、
悪性度(がんの顔つきの悪さ)の診断をします。

以上の検査で前立腺癌が確定すると、がんがどこまで拡がっているのかを調べます。

<CT検査>
周囲の臓器やリンパ節転移の有無を見て、癌の進行具合を調べます。

<MRI検査>
超音波検査では見分けの付きにくいがんも診断できる場合があります。

<骨シンチグラフィー>
前立腺がんは骨に転移しやすいので、骨転移の有無・位置を知るために調べます。


【前立腺がんの病期(ステ−ジ)】

大きく分けると、がんが  1. 前立腺内に限局している場合、
                2. 前立腺周囲に拡がっていても転移がない場合、
                3. リンパ節転移がある場合、
                4. 遠隔転移がある場合の4つに分けられます。

前立腺がんの広がりの分類方法には、TNM分類とABCD分類などの方法がありますが
ここでは日本泌尿器科学会の分類法を記します。

<病期A>
A1:前立腺内に限局した1.0cm以下の病変で高分化のがん(性質のおとなしいがん)

A2:前立腺内にびまん性(1ヶ所にとどまらず、拡がった状態)に拡がったがん、
  もしくは中または低分化のがん(高分化に比べ悪性度の高いがん)、
  偶然発見されたがん(偶発がん)をいいます。

以下は前立腺がんを疑って、細胞診より組織学的にがんと診断された病期です。

<病期B>
前立腺内に限局するがんをいいます。
B1:前立腺を左右に分けると、その片側に病変が限局している1.5cm以下のがん

B2:前立腺内の1.5cmを超えるがん、
  またはびまん性や結節性(かたまりとして発育する状態)に拡がるがん

<病期C>
前立腺被膜を越えて拡がっているが、転移がみられないがんをいいます。
前立腺に隣接する精嚢、膀胱頸部への拡がるがんも含みます。

<病期D>
明かな転移巣がみられるがんです。
D1:骨盤内のリンパ節転移がみられるがん

D2:D1より広い範囲のリンパ節や骨、肺、肝臓などの離れた部位へ転移しているがん


【前立腺がんの治療と副作用】

前立腺がんの治療法として、
ホルモン療法、、手術、放射線、化学療法そして、治療をしない方法があります。

<ホルモン療法> 
特徴は、多くは効果が永久に続かない事と体にかかる負担が比較的少ない事です。
前立腺がんの約80%以上に有効ですが、
3-5年後にはこの半数以上が再び増殖を認め、治療に苦慮するのが現状です。

したがって高齢者の患者さんや、病気が進んでいるため
手術や放射線などの根本的な治療ができない患者さんが対象になります。

副作用は性欲が無くなり、勃起しなくなる、汗をよくかく、手指がこわばる、
体重が増えるなどで、長期間経過すると骨そしょう症や筋力の低下などもあります。

<手術療法> 
一般的に、がんが前立腺をこえていない場合に行ないます。

がんが前立腺をこえている場合は、再発する可能性が高くなります。
また70歳以上で早期がんであれば、手術をしなくても比較的長生きできるので
手術療法はやはり元気な若い患者さんが対象になります。

手術の合併症は主に尿漏れとインポテンツです。
5-10%の人で少量の尿漏れが続きます。
インポテンツはほぼ必発し、勃起神経温存手術をすれば約半数が回復します。

がんが前立腺被膜を少し越えていても、
転移がなければホルモン治療を併用して手術をすることがあります。

<放射線療法> 
前立腺がんに対する放射線治療は近年日本でも積極的に行われつつあります。
少し進行したがんでも効果があり、体の負担が少ないため、高齢者にも行われます。

放射線治療の局所再発は前立腺全摘出より10ー15%高いと報告されています。
副作用は、直腸出血、血尿、排尿障害や膀胱刺激、インポテンツも約半数にあります。

骨転移による疼痛や骨折の可能性が高い場合には
放射線療法も対症療法として行います。

<化学療法>
効果が続く期間が短く、有効性を認めない医師も多くいます。

<治療をしない方法> 
前立腺がんは進行が遅く、高齢者に多いことから、
最近は前立腺内に限局していれば無治療で経過を観察し、
がんが進行した場合はホルモン療法で対処すればよいと述べる医師もいます。

このような考え方が広まってきた理由は、
PSA検査により早期がんや潜在がんの発見が急増したことと
高齢者に対しては本当に治療が必要なのかという疑問が出てきたためです。

この方法の長所は癌が発見される前と同様の生活が送れることです。

【前立腺がんの治療法選択】  

前立腺がんの治療法選択は、医師と患者さんがよく相談し、
治療法とメリット・デメリットの説明を十分にうけ、
患者さんの価値観により、患者さんに合った治療法を、患者さんが選択します。

医師によって治療方法が異なることは珍しくなく、
主治医以外のセカンド・オピニオンを求めることも大切です。

定期的に測定したPSA値の変動がない場合は
がんが成長していないと考えられるため、そのまま経過観察をし、
PSA値が上昇すれば治療を開始することもできます。

【前立腺がんの漢方治療法】

ごく初期の前立腺がんでは外科手術により根治も十分に望めますが、
それでも100%再発・転移がないとは言い切れません。
ただ単に、ガンを取り除いても、ガンが発生した体内環境はそのままなのですから。

前立腺ガンを取り除いたから病気が治ったのではなく、
前立腺ガンが発生した体内環境を変えていくことも大切なのです。

漢方は、前立腺ガンの病期(ステージ)によってや体質によって処方は変わります。

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