冬になると、自然界の一員たちの生活は一変します。
春に元気に走り廻るために、
寒い冬の間は冬眠をする動物、
春に美しい花を咲かせるために、
秋から冬にかけて葉を落としゆく植物などのようにです。
中国の古い医学書の中では、
『自然の法則は、冬は陰の気が強く、陽の気が弱っているのだから、
この陽の気を消費し過ぎて弱めると病気になり、
更に春になると体の中の気が不足するようになってくる』
と言って、冬の生活の仕方を教えています。
「陰」と「陽」は対比されるもので、
活気にあふれた「陽」とは反対に
「陰」とは「陰気な」という時の「陰」で、
内向的な、非活動的な冷たいものを言います。
でも私達は、
冬眠だなどと言って、冬中コタツで寝ているわけにもゆきません。
そのためには、陰性の体の中に陽性のものを取り入れることが大切です。
食物の中で「陽の気」が強いものは動物食ですが
肉食はあまり続けないほうがよろしいでしよう。
陰性の野菜を陽性にするためには
熱を加える(煮る、いためる、焼く、)ことです。
そのうえに
魚などの陽性の動物食品と共に熱を加えると、もっと陽性になります。
たとえば、
魚スキなどの鍋物を食べていると体がホコホコと暖まってきますね。
魚肉という陽性の成分を含んだものが、
汁の中に溶けこんで、野菜の中の水分(陰性)と置き換わるため、
魚スキの野菜は陽性になっています、
これが陰性の食品を陽性にして食べるコツです。
ゴマをすって野菜とまぜたヒタシも良いです。
ゴマ(陽性)をすりつぶすのに非常な力(陽性)をかけますので、
ヒタシは陽性食物となります。ミソや少々の塩も良いです。
この季節は、工夫して陰性の物を陽性にして食べるのですから、
果物、甘い物、冷たい物など陰性の食品はなるべく少なくしましょう。
冬と言えば、コタツとミカンを連想しますね。
大みそかは、紅白歌合戦、除夜の鐘に年こしそば、
正月は、初もうで、モチ、そしてお酒でしょうか。
そば
そば(蕎麦)の原産地は、
シベリアやインドの高地、中国では北方の寒い土地の作物で、
いつしか日本に伝わり、鎌倉時代にはすでに一般的に食されていました。
穀物としては、ソバは冬のもので
寒い地域の主食として身体をあたためる意味でも適したものです。
稗や栗、トウモロコシなどの雑穀もたいへん健康的なものです。
たとえば、行者は、
山中で行をするときにはソバ一味を水とまぜて食べていました。
これだけでも1ヶ月位は滝に打たれて修行ができたそうです。
ソバは陽性ですから、陽の肉食とは調和しませんが
ネギとか大根おろしなどの陰性のものとは合います。
ただ、今のソバは、ソバ粉があまり入っていなくて
白っぽいものが多く、本来のソバとは異なっているようです。
もち
ウルチ米と比べるともち米は陽性のものです。
ソバ、餅、稗などが陽性で、メリケン粉は陰性のものです。
だから、餅は冬に食べられるんですね。
身体が暖まり、冷え症の人や寝小便の子供にはよいものです。
餅を食べると寝小便によいのは、
餅は身体に水をためる性質もあるからです。
ですから、むくみやすい人や痰の多い人にはよくありません。
また腫物、化膿性疾患、皮膚病などにもよくないようです。
餅の入った「ぜんざい」に赤小豆が入っているのは
赤小豆の利尿作用との組み合わせが合理的だからです。
昔の日本人の食生活には、餅は栄養価値のあるものでしたので
正月や祝事には必ずお餅をつきました。
また峠の茶店には力餅を売っていたわけです。
お正月のお雑煮も、野菜とか味噌、納豆のようなタンパク質を添えて
デンプン食である餅とのバランスをとっています。
でも現代は栄養過多で肉食も多いのですから
お正月の餅も、ほどほどに召し上がって下さい。
ところで白米のキレイな餅と、玄米餅とを置いておきますと
鼠は必ず玄米餅をかじるそうです。
わたしたちも鼠の知恵に負けないようにしましょう。
|